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アバットメントとは

インプラントは人工歯根となるインプラント体と人工歯(上部構造)、そして「アバットメント」と呼ばれる部品の3つで構成されています。こちらではインプラント体と人工歯を繋ぐ役割を持つ「アバットメント」について紹介します。

インプラントのアバットメントとは

アバットメントは、インプラント体と人工歯のあいだにある小さな部品であり、インプラント体と人工歯を接合するコネクターとしての役割を持ちます。人工歯の下にあるため、基本的に外から見えることはありません。

アバットメントの素材はインプラント体と同様、チタン合金が用いられるのが一般的です。チタンは金属アレルギーのリスクが低く、また生体親和性が高いため歯茎と密着しやすく、インプラントが固定されやすいというメリットがあります。また電子機器の影響を受けにくいため、MRI検査等にも支障が出ません。

一部のインプラント製品にはアバットメントとインプラント体が一体化しているものもありますが、アバットメントとインプラント体が分かれているタイプが一般的です。

インプラント体とアバットメントが一体になっているタイプもある

インプラント手術は2回法と1回法の2種類があります。一般的には手術を2回に分けて行う「2回法」が採用されますが、患者さんの希望や口腔内の状況によっては手術が1回で済む「1回法」が採用されます。

1回法でインプラント手術を行う場合、前述したようなインプラント体とアバットメントが一体になっているインプラントを使うケースがあります。こういったインプラントを「1ピース(ワンピース)タイプ」と言います。1ピースタイプには「体への負担が比較的少ない」「治療期間が比較的短い」「ネジが緩みにくい」といったメリットがあります。

しかし、1ピースタイプには「口腔内の状態によって適応できないことも多い」「2ピースタイプと比べて微調整が難しい」「万が一トラブルが生じたときは、インプラント体を含め全撤去となる」といったデメリットも…。そのため、実際には1ピースタイプのインプラントを使うことはほとんどありません。1回法でも2回法でも、インプラント体とアバットメントが別々になっている「2ピース(ツーピース)タイプ」が使用されることが多いです。

アバットメントの5つの役割

インプラント体や人工歯と比較すると、アバットメントの存在は患者さんにはあまり認識されていないかもしれません。しかし、アバットメントはただインプラント体と人工歯を連結するだけでなく、ほかにも重要な役割を担っています。

1.インプラント体と人工歯を連結させる

1つ目の役割は、インプラント体と人工歯を連結させることです。アバットメントとインプラントはネジで接合されており、ネジを締めたり緩めたりすることが可能。締め具合を調整することで、インプラントの高さを変えられます。

また、人工歯やアバットメントが破損してしまっても、インプラント体が破損していなければパーツを取り外して交換するだけで済みます。

ただし、インプラント体とアバットメントが一体になっている1ピースタイプの場合、アバットメントが破損したら、インプラント体ごと撤去する必要があります。

2.インプラント体を目立ちにくくする

インプラント体は通常、チタン合金の金属色をしています。基本的には歯茎に埋め込まれているため外から見えることはありませんが、何らかのトラブルが起きたときにインプラント体が露出することがあります。

審美性に優れた素材、たとえばジルコニアなどのアバットメントを選べば、万が一のトラブルが生じても金属の色が外から見えずに済みます。

3.インプラント体にかかる負荷を減らす

天然歯には歯根膜という組織があり、これがクッションの役割を果たしますが、インプラントには歯根膜がありません。歯根膜の代わりにクッションの役割を果たしているのがアバットメントです。

人工歯とインプラント体のあいだにアバットメントがあることで、インプラント体に直接的な負荷がかかるのを防止できます。また、ネジの締め具合によってインプラントの高さを調整することで、咀嚼によるダメージも軽減可能です。

ただ、すべてのダメージを防げるわけではありません。過度な力が加わると破損する可能性もあります。

4.インプラント体の角度を補正する

顎の骨の状態によっては、インプラント体をまっすぐ挿入できないケースがあります。ただ、斜めになったインプラント体に人工歯を装着すると、人工歯も傾いてしまい、咀嚼しづらく、破損もしやすくなります。こういった事例で、アバットメントは角度を補正する役割も果たします。

角度を調整できるアバットメントを使用することで、インプラント体をまっすぐに挿入できなくても、人工歯の角度を補正できるのです。

5.人工歯(上部構造)を保護する

天然歯には歯根膜という組織があり、これがクッションの役割を果たしますが、インプラントには歯根膜がありません。歯根膜の代わりに緩衝材の役割を果たしているのがアバットメントです。咀嚼の際に加わる力を和らげて、人工歯の負荷を軽減できます。

また前述のとおり、インプラントの角度を補正してかみ合わせを適切にすることで、人工歯に無理な力が加わるのを防ぐことも可能です。

アバットメントの素材の種類

アバットメントの素材に使われることが多いのはチタン合金ですが、ほかにも純チタンや金合金、ジルコニアなどの種類があります。それぞれの特徴を紹介します。

チタン合金

チタン合金はインプラントといった歯科治療だけでなく、医科分野でも人工関節などで幅広く使用されている生体親和性が高い金属です。生体親和性が高いため、歯茎にも密着しやすく、アバットメントの素材のなかでも主流になっています。

ほかにも「錆びにくい」「強度に優れている」というメリットがあります。ただ、ジルコニアなどの素材と比べると審美性に劣るのがデメリット。歯肉が薄い前歯部は金属の色が透けてしまう可能性があります。

純チタン

前述のチタン合金は、チタンをベースにアルミニウムなどの金属を数パーセント組み合わせた合金ですが、純チタン製のアバットメントは99%がチタンでできています。

チタン合金よりも加工しやすく、コストが安く済むというメリットがありますが、強度や耐食性が劣るため、実際には純チタン製のアバットメントが使われることはほとんどありません。

純チタン製のアバットメントが使用されるのは、インプラント体が純チタンの場合です。インプラントが純チタンのときにチタン合金など異なる素材のアバットメントを使用すると、ひずみが起きやすく、インプラントの寿命が短くなりやすいためです。

金合金

金合金を用いたアバットメントは、硬すぎず柔らかすぎず適度な硬度があり、インプラントと適合しやすいのが特徴です。

しかし、チタンと比べてコストが高いのがデメリット。またチタン同様、金属の色が目立ちやすいため審美性には欠けてしまいます。

ジルコニア

ジルコニアアバットメントの素材は、ジルコニアという人工的に製造した物質です。金属ではないため、金属アレルギーの人に適しています。

天然歯に近い色合いで製作でき、審美性に優れているのが最大の特徴です。前歯部のように歯肉が薄い部分でも、金属の色が透けて黒く見えてしまうことがありません。また、加齢に伴って歯茎が下がってしまっても、アバットメントが白いので目立たずに済みます。審美性を重視する場合はジルコニアアバットメントを選ぶとよいでしょう。

ただ、ジルコニアは強度にも優れていますが、一定方向の力には弱いというデメリットがあります。定期的にメンテナンスを受けて、角度や高さを調整することで破損を予防できます。

起こりうるアバットメントのトラブル

アバットメントはインプラント体と人工歯を繋ぐだけではなく、「インプラントの高さを調整する」「インプラントの角度を補正する」「インプラント体や人工歯にかかる負荷を減らす」など、さまざまな役割を担っています。そのため、アバットメントに不具合が生じると、下記のようなトラブルに発展する可能性があります。

  • 噛み合わせが合わない
  • 痛みが生じる
  • インプラント体が脱落する

アバットメントに不具合が生じたまま放置すると、人工歯が破損してしまったり、インプラント体が脱落してしまったり、より大きなトラブルになりかねません。ぐらつきがある場合はアバットメントの不具合を疑い、なるべく早めに歯科医院で相談したほうがよいでしょう。

まとめ

インプラント治療では、インプラント体や人工歯に注目しがちですが、アバットメントも大切なパーツの1つです。インプラント体と人工歯を接合する以外にも重要な役割を担っており、アバットメントに不具合が生じると、人工歯の破損やインプラントの脱落といった大きなトラブルにもなりかねません。それぐらい重要なパーツであることを理解しておきましょう。

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